部屋や心の整理をして、美味しいご飯が食べたくなるドラマだった。
「パンとスープとネコ日和」
編集者のアキコが母の死をきっかけに仕事を辞め、パンとスープだけのお店を出す、というだけのストーリー。
脇役たちが一癖も二癖もあって、でも優しくて、素敵なドラマだった。
小林聡美・もたいまさこ・フードコーディネーター飯島奈美という最強タッグだ。
わたしが引っかかったシーンが2つあった。
ひとつめは、
アキコが散歩をしている時に、ガーデニングが立派なお家の横を通り過ぎる。花を眺めていると、その家の奥さんが出て来て、「これもなにかの縁だから」とアキコに花を一鉢くれる。その時のアキコの反応がすごくひっかかってしまう。私だったら「わーありがとうございますー!」と、満面の笑みでお礼を言ってるところだと思う。けれどアキコは、嬉しいんだか嬉しくないんだかよく分からない微妙な表情で「あ、どうも。」と言ってすぐに立ち去る。
たぶん、大方の人はわたしと同じような反応をすると思う。
人からの好意を受け取ったのだから、それが荷物になるなと思っても、花が枯れてしまうからあまり欲しくないなと思っていても、すごく嬉しそうに振る舞うと思う。
でも、アキコは違う。微妙そうな顔をしたままそっけなく立ち去る。それを見たら、わたしの態度ってなんて正直じゃないんだろう、と思った。一体いつから、人と接する時ネコをかぶるようになってしまったのかな、と考えてしまった。
他人との摩擦を生まないように振る舞うことを「コミュ力が高い」というのだとしたら、わたしはきっとコミュ力が高い。けど、摩擦も生まない代わりに、人の心になんの引っかかりも残さないんだろうな。引っかかりがない人は、すぐ忘れる。
もう1つ、最後にすごく引っかかった場面。
最後の最後の場面で、おばあちゃんと母と娘が客として来る。
元気でさばさばした娘が「おばあちゃんサーモンだって!鮭をかっこよく言ったのがサーモンだよ!これでいいよね!サーモン!これにしようねおばあちゃん!」と強引に注文を決めたりするんだけど、それが全然嫌な感じがしない。
食べているときも「美味しいねぇ。おばあちゃん美味しい?すげー食べてるよー!」とけらけら笑ったり、「はい撮るよー!」と3人で自撮りしたり、賑やかで気持ちのよい子で、それが見ていてすごく微笑ましい。
おばあちゃんもお母さんも娘も、笑いながら「おいしいねえ」「おばあちゃんは本当にパンが好きねえ」と言いながら、みんなでサンドイッチとスープを食べるだけのシーン。
このシーンが、切なすぎた。
たぶん、昨日スーパーの踊り場のベンチで、1人でお弁当を食べているおじいちゃんを見たからだと思うんだけど。
みんなでご飯を食べることの幸福感てなんて圧倒的なんだろう、と。
ないものに目を向けることの方がどうしたって簡単なんだけど、今自分が持っているものにきちんと目を向けて、それを大切にしていこう。
新しい事が始まるこの4月は、反面すごく疲れるから、お風呂の後のちょっとした時間とか、気持ちのいい土曜日の午前中とかに観ると、心が整うドラマだな、と思う。
そしてたぶん、次のご飯を丁寧につくりたくなる。